はじめに
砂ろ過は、水中の懸濁物質を除去するための基本的な水処理技術の1つです。砂などのろ材を用いることで、濁質を物理的に捕捉し、清澄な水を得ることができます。砂ろ過は浄水処理、工業用水の処理、排水処理など幅広い分野で利用されています。

砂で水をきれいにする方法は、自然の地下水ができる仕組みに似ているよ。雨がゆっくり地面にしみこんで、小石や砂の間を通ることで、きれいな水に変わるんだ!
砂ろ過の原理
砂ろ過では、ろ過池あるいはろ過塔の砂層を水が通過する際に、水中の懸濁物質が砂粒間で物理的に捕捉されます。主な捕捉のメカニズムは以下のとおりです。
- ふるい効果:ろ材の間隙より大きい粒子は通過できず捕捉されます。
- 慣性衝突と付着:流れの慣性により粒子が砂粒に衝突・付着します。
- 遮り効果:流れてくる粒子が、砂粒の近くを通過する際に接触・捕捉されます。
- 拡散効果:微小粒子がブラウン運動で砂粒に接触・付着します。
-
ふるい効果
砂粒子の間隙を通過できない大きさの粒子が捕捉されます。この現象は、主にろ過層の表層で発生します。図1に示すように、均一な球形の砂粒子が密に充填された層では、砂粒径の約7分の1のサイズより大きな粒子は砂の間隙を通過できません。
ろ過層内を水が通過する際、水流による粒子の撹拌効果が生じ、粒子同士が接触・凝集する場合があります。凝集体が形成されると、単体では通過し得た微粒子もふるい効果で捕捉されます。また、砂粒表面へ生物膜ができると空隙が狭まり、ふるい効果が高まります。ただし、これに伴って通水抵抗が増大し、最終的には砂層の洗浄が必要となります。

図1 ふるい効果
-
慣性衝突
慣性衝突とは、原水中の懸濁粒子が砂粒付近を通過する際、流線が急激に変化すると粒子がその変化に追従できず、自身の慣性によって流線から逸れて砂粒表面に衝突・付着する現象です。
図2に示すように、水は砂粒間を縫うように移動します。しかし、懸濁粒子にある程度の質量と速度がある場合、流線が砂粒を避けて湾曲しても、粒子はその進行方向を維持しようとする性質(慣性)を持つため、水の流れからはずれ、砂粒へ到達します。

図2 慣性衝突
-
遮り効果
遮り効果は、図3のように、粒子が流線に沿って砂粒のごく近傍まで運ばれた際、慣性力や遠心力、ファンデルワールス力などが複合的に作用し、粒子が砂粒に接触して捕捉される現象です。粒子径が大きいほど、砂粒表面との接触確率が高まります。

図3 遮り効果
-
拡散効果
液体の熱エネルギーは、分子のランダムな運動として現れます。これらの分子が粒子と衝突することで、粒子自体も不規則な運動(ブラウン運動)を行います。この粒子の動きは、ランダムウォークと呼ばれる断続的なステップの連なりとして観測されます。
図4に示すように、粒子が水流に乗って移動している場合、この拡散運動が重なることで、粒子は元の流線から外れ、別の流線へと移動し、その結果、粒子が砂粒と接触する確率が高まります。一般に、水流の速度が遅いほど、砂ろ過層内での滞留時間が長くなり、ランダムなステップ数が相対的に増加するため、粒子と砂粒の衝突確率は高まります。また、水温が高いほど熱エネルギーが大きくなり、ランダム運動が活発化するため、同様に衝突確率が高まります。拡散効果は、特に粒径1µm以下の微細な粒子に対して重要な砂ろ過の粒子捕集メカニズムです。

図4 拡散効果
砂ろ過の種類
砂ろ過はろ過方法により以下に分類されます。
-
1.緩速砂ろ過(Slow Sand Filtration)
流速:0.1~0.3 m/h(非常に低流速)
特徴:砂層表面に形成される生物膜により、細菌や微粒子の除去性能が高くなります。
用途:小規模水道、河川水や地下水を水源とする浄水場。
-
2.急速砂ろ過(Rapid Sand Filtration)
流速:5~15 m/h(高流速)
特徴:砂層での物理的捕捉が主であり、前処理(凝集・沈降)と組み合わせて使用されることが多いです。
用途:上水道の浄水場、排水処理の二次処理後の仕上げ処理など。
砂ろ材の仕様
- ろ材:主に珪砂(SiO2)を使用
- 粒径:一般に0.4~1.2 mm程度(用途により異なる)
- 層厚:0.6~1.0 m程度
- 支持層:砂層下に砂利層を敷設し、ろ材の流出防止、ろ過・洗浄時に水流を均一に分散させる役割があります。


ちなみに三進製作所の『NEWオートサンド』では、珪砂を使うけど、『B型オートサンド』は、逆洗水量を抑えるため、比重の軽いアンスラサイトを使用しているよ!
砂ろ過の運転管理
- 1.運転:水を上から供給し、重力または加圧下で砂層を通過させろ過します。
流量、流速、ろ過水の濁度を監視しながら運転します。 - 2.逆洗:砂層に捕捉された汚れが蓄積すると圧力損失が増大するため、逆洗(逆流洗浄)を行い、捕捉物を除去します。
急速砂ろ過では定期的(1~3 日)に逆洗が必要です。
緩速砂ろ過では砂層表面の薄層を除去・補充する方法で管理しています。

砂ろ過塔の逆洗を行う際の水の流れはろ過とはちょうど逆になるよ。タンクの下部より洗浄水が入って、上部から排出されるんだ。ろ材に付着しているゴミも一緒に流されるよ!
まとめ
砂ろ過は、構造がシンプルで操作も容易な、基本的かつ信頼性の高い水処理技術であり、水中の懸濁物質除去、濁度低減に広く使用されています。緩速砂ろ過と急速砂ろ過があり、用途・水質条件に応じて使い分けられます。膜ろ過との併用で処理水質をさらに向上でき、浄水場、工業用水処理設備、排水処理施設で今後も重要な役割を果たし続ける技術です。
【参考文献】
- 1)分離技術会編;分離技術ハンドブック,分離技術会,(2010)
- 2)杉本泰治;濾過ーメカニズムと濾材・濾過助剤,地人書館,(1992)



お問い合わせは下記バナーをクリックしてね