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アンモニウムイオンの分析

2026.05.28

はじめに

アンモニウムイオン(NH4+)は窒素原子1個と水素原子4個からなるイオンです。アンモニア(NH3)とは水素原子の数が違うだけではなく、化学的性質も異なります。例えばアンモニアは常温常圧では気体で存在し、アンモニウムイオンは水溶液中や固体の塩として安定に存在します。また、アンモニアは弱塩基性ですが、アンモニウムイオンは弱酸性です。

アンモニアおよびアンモニウムイオンは工業的には化学肥料や医薬品の原料、合成樹脂や化学繊維の中間材料等として利用されています。また、pH調整や金属との錯体を形成することから、表面処理やめっき工程などにおいても使用されています。

アンモニウムイオンを含む排水は上述の工場・事業場から排出されます。アンモニウムイオンを大量に含む排水が河川や湖沼に流入すると、アンモニウムイオンの窒素分により、富栄養化を引き起こします。この富栄養化は藻類を増殖させ、湖沼の景観を損なうだけではなく、溶存酸素(水中の酸素)を消費し、魚介類の大量死を誘発します。

アンモニウムイオンを含む排水の処理では、生物学的処理(硝化・脱窒)や物理化学的処理(不連続点塩素処理、アンモニアストリッピング法)によって窒素を除去します。排水には排水基準が設けられており、アンモニウムイオン由来の窒素もその対象です。排水に含まれるアンモニウムイオンの定量分析は私たちの生活環境を守るためには必要不可欠です。

工業用水・工場排水のアンモニウムイオンは中和滴定法、インドフェノール青吸光光度分析法、サリチル酸-インドフェノール青吸光光度分析法、流れ分析法、イオンクロマトグラフィー、イオン電極測定法によって定量されます。ここでは工業用水・工場排水のアンモニウムイオンの定量分析方法として、中和滴定法について記載していきます。

アンモニウムイオンの前処理(蒸留)

アンモニウムイオンの分析では、まずサンプルに前処理を施し、その後、前処理済みのサンプルに対して各種分析法を適用します。前処理としては蒸留操作を行います。使用する試薬および器具は以下の通りです。

<試薬>

  • 硫酸(25 mmol/L)
  • 硫酸(1+35)
  • 水酸化ナトリウム溶液(40 g/L)
  • 酸化マグネシウム
  • ブロモチモールブルー溶液
  • メチルレッド-ブロモクレゾールグリーン混合溶液
  • 水(JIS K 0557に規定されるA3の水)

<器具・装置>

  • 蒸留装置
  • メスシリンダー(200 mL)
  • 有栓型メスシリンダー(200 mL)
  • 三角フラスコ(500 mL)

<操作手順>

  • 蒸留フラスコにサンプルの適量V mL(最大200 mL)を採取します。このとき、サンプルのpHが中性でない場合には、硫酸(1+35)または水酸化ナトリウム溶液(40 g/L)を用いて中性とします。また、サンプルに残留塩素が含まれている場合にはチオ硫酸ナトリウムを加えて除去します。
  • 蒸留フラスコに酸化マグネシウム0.25 g、沸騰石および水を加えて約350 mLとします。酸化マグネシウムを添加する目的は、酸化マグネシウムは塩基性酸化物であり、アンモニウムイオンを遊離アンモニアに酸化するためです。酸化された遊離アンモニウムは気相へ移動し、吸収液である硫酸と反応して硫酸アンモニウムとなり、硫酸を消費します。
  • 酸化マグネシウムとアンモニウムイオンの反応

    酸化マグネシウムとアンモニウムイオンの反応

  • 硫酸とアンモニアの反応

    硫酸とアンモニアの反応

  • 受器の有栓型メスシリンダーに吸収液として硫酸(25 mmol/L)を50 mL入れます。特に中和滴定に使用する場合には正確に採取します。また、中和滴定に用いる場合には指示薬としてメチルレッド-ブロモクレゾールグリーン混合溶液を2~3滴を加えます。
  • 蒸留フラスコを加熱して、留出速度5~7 mL/minで蒸留します。逆流止めの先端を液面下に保ちます。
  • 液量約190 mLとなるまで蒸留します。
  • 冷却器および逆流止めを外し、その内外を少量の水で洗浄します。洗浄水は有栓型メスシリンダーに受けます。
  • 空試験として水350 mLを蒸留フラスコにとり、酸化マグネシウム0.25 g、沸騰石入れ、③~⑥と同様の操作をおこないます。

アンモニウムイオンの中和滴定法

この方法では、蒸留操作によって留出したアンモニアを吸収液中の硫酸(25 mmol/L)と反応させ、反応後に残存する硫酸を50 mmol/L水酸化ナトリウム溶液で滴定することで定量します。

<試薬>

  • 50 mmol/L水酸化ナトリウム溶液

<器具・装置>

  • ビュレット

<操作手順>

  • 蒸留操作で得られたサンプルの流出液の全量に対して、50 mmol/L水酸化ナトリウム溶液を溶液の色が青緑色から灰紫色になるまで滴定[滴定量B mL]します。
  • 蒸留操作の空試験で得られた留出液に対しても、①と同様の操作を行います。[滴定量A mL]
  • 次式よりサンプルのアンモニウムイオン濃度を算出します。

<計算式>

アンモニウムイオン濃度

NH4+ アンモニウムイオン濃度 [mg/L]
A: 空試験の滴定に要した50 mmol/L水酸化ナトリウム溶液量 [mL]
B: サンプル試験の滴定に要した50 mmol/L [mL]
水酸化ナトリウム溶液量 [mL]
f: 50 mmol/L水酸化ナトリウム溶液のファクター
V: サンプル量[mL]
0.902: 50 mmol/L水酸化ナトリウム1 mLに相当する
アンモニウムイオンの質量 [mg/mL]

【参考文献】

  • 1)工業用水・工場排水試験方法-第2部;陰イオン類,アンモニウムイオン,有機体窒素,全窒素及び全りん JIS K0102-2

Author

  • 技術研究所 Y.Y.

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