はじめに
全窒素の分析法には、総和法、酸化分解-紫外線吸光光度分析法、酸化分解-銅・カドミウムカラム還元-ナフチルエチレンジアミン吸光光度法、流れ分析法(酸化分解-紫外線吸光または銅・カドミウムカラム還元-ナフチルエチレンジアミン発色)または熱分解分析法があります。
ここでは、当社で用いる酸化分解-紫外線吸光光度分析法による全窒素分析法について紹介します。酸化分解-紫外線吸光光度分析法は、すべての窒素化合物を硝酸イオンに変えて全窒素を求める方法です。
前処理
試料にペルオキソ二硫酸カリウムのアルカリ性溶液を加え、約120℃で加熱して窒素化合物を硝酸イオンに変えるとともに有機物を分解します。この方法は、試料中の有機物が分解されやすく、少量含まれている場合に適します。
<試薬>
- 純水(JIS K 0557に規定するA3以上の水)
- 塩酸(25.7 g/L)
- 水酸化ナトリウム-ペルオキソ二硫酸カリウム溶液
- 水酸化ナトリウム(40 g/L)
<器具・装置>
- 分解瓶100 mL(PTFE製で、高圧蒸気滅菌器中で使用できるもの)
- 高圧蒸気滅菌器
- 吸光光度計
- 吸収セル10 mm(石英ガラス製)
<操作手順>
-
1.試料50 mL(Nとして0.1 mg/L以下のもの)を分解瓶にとります。
- a)pHが5~9の範囲以外、Nとして0.1 mg/L以下の場合、試料50 mLを分解瓶にとり、塩酸(25.7 g/L)または水酸化ナトリウム(40 g/L)でpHを中性に調整し、その添加量V2を記録します。
- b)pHが5~9の範囲以内、Nとして0.1 mg/L以上の場合、試料適量V1を全量フラスコ100 mLに移し、標線まで純水を加え希釈します。希釈液から50 mLを分解瓶にとります。
- c)pHが5~9の範囲以外、Nとして0.1 mg/L以上の場合、試料適量V1をビーカー100 mLにとり、塩酸(25.7 g/L)または水酸化ナトリウム(40 g/L)でpHを中性に調整後全量フラスコ100 mLに移し、標線まで純水を加え希釈します。希釈液から50 mLを分解瓶にとります。
- 2.水酸化ナトリウム‐ペルオキソ二硫酸カリウム溶液10 mLを加え直ちに密栓し、軽く振って混合します。
- 3.分解瓶を高圧蒸気滅菌器に入れて加熱し、約120 ℃で30分間加熱分解します。
- 4.分解瓶を高圧蒸気滅菌器から取り出し、放冷します。
- 5.空試験として純水50 mLを分解瓶にとり、操作2~4を行います。
酸化分解‐紫外線吸光光度分析法
前処理後室温に戻った液に塩酸を添加し、波長220 nmにおける吸光度を測定して、全窒素濃度を定量します。以下に操作手順と計算式を示します。
<操作手順>
- 1.室温に戻った上澄み液25 mLを有栓メスシリンダー50 mLに分取します。
(水酸化物が発生した場合は水酸化物の沈殿を取らないように採取します。場合によってはろ紙No.5Cでろ過してそのろ液25 mLを使用します。) - 2.塩酸(25.7 g/L)5 mLを加えpH2~3にし、密栓してゆっくり混合します。
- 3.溶液の一部を吸収セルに移し、波長220 nmにおける吸光度を測定します。
- 4.空試験として前処理した液について操作1~3を行います。
- 5.あらかじめ、作成した検量線より、全窒素の量[µg/25mL]を求め、以下の式によって試料中の全窒素の濃度[mg/L]を算出します。
<計算式>
| C: | 吸光光度計で測定した値 [µg/25 mL] |
|---|---|
| V1: | Nとして0.1 mg/L以上の場合、希釈時に使用した試料の量 [mL] |
| V2: | 試料のpHが5~9範囲以外の場合、pH調整に使用した塩酸(25.7 g/L)また水酸化ナトリウム(40 g/L)の添加量 [mL] |
※希釈を行った場合のみ使用。
【参考文献】
- 1)日本産業規格K0102-2
- 2)日本規格協会:詳解 工場排水試験方法 JIS K 0102 解説 改訂5版




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