はじめに
JIS K 0102では、ペルオキソ二硫酸カリウム、硝酸-過塩素酸または硝酸-硫酸によって分解したときにりん酸イオンになるものを全りんといいます。
全りんは、りん酸イオンに分解された試料をモリブデン青吸光光度分析法または流れ分析(モリブデン青発色)によって定量します。
ここでは、当社で用いる全りん分析法のモリブデン青吸光光度分析法による全りん分析法について紹介します。りん酸イオンへの酸化分解にはペルオキソ二硫酸カリウムを使用します。
前処理
試料にペルオキソ二硫酸カリウム溶液を加え、高圧蒸気滅菌器の中で約120℃で加熱して有機物を分解し、りん化合物をりん酸イオンにします。
<試薬>
- 純水(JIS K 0557に規定するA3以上の水)
- ペルオキソ二硫酸カリウム溶液(40 g/L)
- 硫酸(50 g/L)
- 水酸化ナトリウム(40 g/L)
<器具・装置>
- 分解瓶100 mL(耐熱性のガラス瓶で、高圧蒸気滅菌器中で使用できるもの)
- 高圧蒸気滅菌器
<操作手順>
-
1.試料(pH5~9、Pとして0.06 mg/L未満)50 mLをとり、分解瓶に入れます。
- a)pHが5~9の範囲以外、Pとして0.06 mg/L以下の場合、試料50 mLを分解瓶にとり、硫酸(50 g/L)または水酸化ナトリウム(40 g/L)でpHを中性に調整し、その添加量V2を記録します。
- b)pHが5~9の範囲以内、Pとして0.06 mg/L以上の場合、試料適量V1を全量フラスコ100 mLに移し、標線まで純水を加え希釈します。希釈液から50 mLを分解瓶にとります。
- c)pHが5~9の範囲以外、Pとして0.06 mg/L以上の場合、試料適量V1をビーカー100 mLにとり、硫酸(50 g/L)または水酸化ナトリウム(40 g/L)でpHを中性に調整後全量フラスコ100 mLに移し、標線まで純水を加え希釈します。希釈液から50 mLを分解瓶にとります。
- 2.ペルオキソ二硫酸カリウム溶液10 mLを加え直ちに密栓し、軽く振って混合します。
- 3.分解瓶を高圧蒸気滅菌器に入れて加熱し、約120 ℃で30分間加熱分解します。
- 4.分解瓶を高圧蒸気滅菌器から取り出し、自然放冷します。
- 5.空試験として純水50 mLを分解瓶にとり、操作2~4を行います。
モリブデン青吸光光度分析
前処理により分解されたりん酸イオンをモリブデン青の錯体にして波長880 nmにおける吸光度を測定して、全りん濃度を定量します。以下に操作手順と計算式を示します。
<試薬>
- 亜硫酸水素ナトリウム(50 g/L)
- L-アスコルビン酸溶液(72 g/L、冷蔵保存)
- モリブデン酸アンモニウム溶液
- モリブデン酸アンモニウムーアスコルビン酸混合溶液(モリブデン酸アンモニウム溶液とL-アスコルビン酸溶液(72 g/L)を体積比5:1で混合、使用時に混合)
<器具・装置>
- 吸光光度計
- 吸収セル10 mm(ガラス製または石英ガラス製)
<操作手順>
- 1.室温に戻った上澄み液25 mLを有栓メスシリンダー50 mLに分取します。
(塩化物イオン及び硫酸イオンが多量(40 g/L)共存しても影響はありません。これ以上存在している場合は亜硫酸ナトリウム溶液(50 g/L)を1 mL(V3)添加してから分取します。) - 2.モリブデン酸アンモニウムーアスコルビン酸混合溶液2 mLを加え、密栓して振り混ぜた後15分静置します。
- 3.15分後、溶液の一部を吸収セルに移し、波長880 nmにおける吸光度を測定します。
- 4.空試験として前処理した液について操作1~3を行います。
- 5.あらかじめ、作成した検量線より、りんの量[µg/25 mL]を求め、試料中の全りんの濃度[mg/L]を定量します。

写真(左):発色前
写真(右):発色後
<計算式>
| C: | 吸光光度計で測定した値 [µg/25 mL] |
|---|---|
| V1: | Pとして0.06 mg/L以上の場合、希釈時に使用した試料の量 [mL] |
| V2: | 試料のpHが5~9範囲以外の場合、pH調整に使用した硫酸(50 g/L)また水酸化ナトリウム(40 g/L)の添加量 [mL] |
| V3: | ペルオキソ二硫酸カリウムによる分解後に塩化物が多く含まれているときに添加する亜硫酸水素ナトリウムの量 [mL] |
※希釈を行った場合のみ使用。
【参考文献】
- 1)日本産業規格K0102-2
- 2)日本規格協会:詳解 工場排水試験方法 JIS K 0102 解説 改訂5版




お問い合わせは下記バナーをクリックしてね