はじめに
6価クロムを還元処理後に固液分離を行っている事業所や6価クロムを使用していない(3価クロムは使用している)事業所の放流水で6価クロムが検出されることがあります。これは、凝集沈殿槽などで3価クロムが酸化されて6価クロムになる現象(再酸化)が起きているためです。

次にどのような条件で再酸化が起こるか見ていくよ。
6価クロムの再酸化
再酸化はクロムめっきや亜鉛めっきを行っている事業所で起こる可能性があります。再酸化は以下の条件の時に起こりやすくなります。
- ①6価クロム還元処理時の亜硫酸水素ナトリウムの過剰添加とニッケルによる酸化
- ②酸化剤による酸化
ニッケルによる再酸化の状況を見ていきましょう。
模擬実験としてニッケル濃度35 mg/L、3価クロム濃度5 mg/Lの溶液をpH10.5に調整後、亜硫酸水素ナトリウムを任意の量添加し、18時間後に上澄液の6価クロム濃度を測定しました。その結果を図に示します。

図1 上澄液の6価クロムの変化
図より、亜硫酸水素ナトリウムが含まれていない場合は、6価クロムの検出はありませんでしたが、亜硫酸水素ナトリウムが含まれている場合、6価クロムが検出されました。この反応は以下の反応式で6価クロムが生成されていると考えられています。
2Ni(OH)2 + NaHSO3 → Ni2(OH)2SO3 + NaOH + H2O
Ni2(OH)2SO3 + O2 + H2O → NiO2 + NiSO4 + 2H2O
2Cr(OH)3 + 3NiO2 + 4NaOH → 2Na2CrO4 + 3Ni(OH)2 + 2H2O
6価クロム排水を還元した後、他の排水と混合して処理している場合は、含まれる金属によって再酸化が起こる可能性があるため、注意が必要です。

6価クロムの再酸化ではないけど、3価クロメート排水を処理するときに6価クロムが生成されるときがあるよ。
再酸化の抑制方法
再酸化を抑制する方法としては、
- ①亜硫酸水素ナトリウムの添加を過剰に行わない
- ②ニッケルなどの金属を含む排水と混合しない
- ③2価の鉄塩を添加し、凝集沈殿処理を行う
などがあります。抑制する方法を行っても、放流水に6価クロムが検出される場合は、放流槽にてハイドロサルファイトナトリウムを添加するか、処理後の水をイオン交換樹脂に通液することで6価クロムを取り除きます。ただし、ハイドロサルファイトナトリウムの添加は6価クロムを3価クロムに還元させるのであり、全クロム濃度は変化しないため、規制値には注意する必要があります。
③の具体例として硫酸鉄(Ⅱ)を用いた6価クロムの再酸化抑制効果について表に示します。硫酸鉄(Ⅱ)を添加しない場合、6価クロムの再酸化が起こり、処理するpHが高いほど再酸化が起こりやすくなっています。硫酸鉄(Ⅱ)を添加した場合、6価クロムの再酸化が抑制され、定量下限値以下となりました。鉄(Ⅱ)は6価クロムを還元する還元剤であるため、再酸化が起こってもすぐに還元されているか酸化反応を抑制しているかのどちらかが作用していると考えられます。
表1 凝集沈殿処理後の上澄液の6価クロム濃度の変化(単位 mg/L)
| 硫酸鉄(Ⅱ) 添加無 |
硫酸鉄(Ⅱ) 添加有 |
|||
|---|---|---|---|---|
| 処理pH[-] | 10 | 12 | 12 | |
| 静置時間 [h] |
0 | 0.04 以下 |
0.04 以下 |
0.04 以下 |
| 15 | 0.11 | 0.42 | 0.04 以下 |
|
| 24 | 0.11 | 0.49 | 0.04 以下 |
|
| 40 | 0.12 | 0.47 | 0.04 以下 |
|

6価クロムの排水基準が0.2 mg/Lなので、再酸化が起きている場合は対策が必要だね
まとめ
6価クロムが放流水で検出される場合は、原因を調査し、対策を検討する必要があります。

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