はじめに
工場における製品の製造過程で、有害物質や生活環境に影響を及ぼすと考えられる物質を含んだ排水、たとえば、有機物や栄養塩を含んだ排水、重金属イオンを含んだ排水、濁りとなる物質を含んだ排水などが発生することがあります。また、一般家庭においても炊事や洗濯、排泄などにより生活排水が発生します。
このような排水を適切な処理を行わずに河川や海などの公共用水域や下水道などに排出してしまうと、私たちの健康や自然環境・生態系に大きな影響を及ぼすことは容易に想像できると思います。
ここでは排水に含まれる有害物質や生活環境に影響を及ぼすと考えられる物質をどのように取り除き、処理をおこなっているのか、排水処理の概要を説明します。
排水処理の種類
排水処理とは一般家庭や工場・事業所から排出される廃液から上述の物質を取り除くことであり、「物理的処理」、「化学的処理」、「生物学的処理」の3種類に大別されます。表1に代表的な排水処理法の一覧を記載します。
物理的処理では、排水に含まれる濁質(もともと含まれる固体微粒子や、有害な金属イオンを化学処理により固体化したもの、生物処理で発生した汚泥など)を凝集沈殿、浮上分離、ろ過などにより取り除きます。
化学的処理は、酸化・還元反応による有害物質の無害化処理や、それに続く中和反応などを用いた固体化処理などが挙げられます。
生物学的処理は好気性や嫌気性の微生物を使用した有機物の処理や窒素・リンの除去が挙げられます。
一括りに排水と言っても、工場や製造する品物により発生する排水の種類は異なります。通常は表1のような排水処理の手法を組み合わせて、適切な排水処理設備を構成します。三進製作所では適切な排水処理設備の提案をおこなうために、お客様から排水を提供していただき、排水の分析や排水処理のラボテストを実施しています。
表1 代表的な排水処理法の一覧
処理法 | 概要 |
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沈降分離 | 化学処理により排水中の汚濁物質を不溶性の懸濁物質に変え、懸濁物質を沈降させることで、水と分離する方法。普通沈殿(自然沈殿)と凝集沈殿に大別される。 |
凝集沈降 | 固形物は重力により沈降していく。固形物が微細な場合には沈降速度が小さすぎたり、沈降せず分散状態となる。そこで、凝集剤を加えて、微細な固形物を大きな塊とすることで沈降させやすくする操作。 |
浮上分離 |
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清澄ろ過 | 沈降分離や浮上分離で除去できなかった微量の懸濁物質を、さらに除去して清澄な液を得るのが清澄ろ過である。一般的なろ材としては砂が用いられ、砂ろ過と呼ばれる。 |
酸化・ 還元 |
酸化および還元反応により、排水中の有害物質を無害化する方法である。有害物質の無害化処理として、遊離塩素によるシアンの酸化分解や還元剤による六価クロムの三価クロムへの還元が挙げられる。 |
活性炭 吸着 |
石炭やヤシ殻などを原料として炭化したものを賦活化することで得られる活性炭を用いた吸着方法。活性炭は比表面積が大きく、無数の細孔が存在する。主に有機物の除去に用いられており、粉末状や粒状で用いられる。 |
イオン 交換 |
イオン交換とは液相中のイオンをイオン交換体に捕捉し、イオン交換体から代わりのイオンを放出する現象である。このイオン交換能を有する有機化合物をイオン交換樹脂と呼び、排水中の有価金属イオンの回収や重金属イオンの除去などに用いられる。イオン交換樹脂が金属イオンなどで飽和した場合は再生という操作を行うことにより繰り返し利用可能である。 |
膜分離 | 膜分離は微細な孔を持つ膜を通してろ過を行うことで、細菌やコロイド状の懸濁物質を除去する方法である。膜の種類により精密ろ過、限外ろ過および逆浸透法などがある。 |
活性 汚泥法 |
活性汚泥法は多数の好気性の微生物や有機・無機性の浮遊物質などからなるフロックにより、有機物を吸着して、酸化分解する方法である。この他にも、嫌気・好気活性汚泥法によるリンの除去が挙げられる。 |
生物膜法 | 活性汚泥法では微生物を水と共に流動させるのに対し、微生物を支持体に膜状に固定して処理を行う方法である。生物膜法には散水ろ床法や接触酸化法、回転円盤法などがある。 |
嫌気性 処理 |
排水に含まれる有機物を嫌気性細菌によりメタンや二酸化炭素に分解する処理法である。また、窒素化合物の除去のため硝化・脱窒を行う細菌を用いる方法があり、脱窒プロセスにおいては硝化された窒素化合物を嫌気性細菌により窒素に還元する。 |
排水処理をおこなうためには排水の性状の確認が重要となるんだね!
排水処理のラボテストをおこなえば、安心して排水処理設備の導入ができるね!
【参考文献】
- 1)井出哲夫;水処理工学-理論と応用- , 技報堂出版(1978)
- 2)産業環境管理協会;公害防止の技術と法規〔水質編〕 , 丸善(1997)
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