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ふっ素化合物の分析法

2025.04.30

はじめに

ふっ素化合物はふっ化物イオン、金属ふっ化物の総称であり、ふっ化物イオンの量で表します。ふっ化物イオンはランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度分析法、流れ分析法(ランタン-アリザリンコンプレキソン発色)、イオンクロマトグラフィーまたは、イオン電極測定法で定量します。

ここでは、当社でふっ化物イオンを定量するときに用いるイオン電極測定法とランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度分析法について紹介します。

ロカッキー

当社ではJIS K 0102に従って分析手順書を作成しているんだよ。

前処理

ランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度分析法やイオン電極測定法で、ふっ化物イオンの定量する時に試料中に妨害物質が含まれていると測定値に影響を与えます。アルミニウム、ニッケル、鉄、鉛など陽イオンの妨害が考えられます。
試料中に含まれているこれらの妨害物質を取り除き、ふっ化物イオンを分離するために前処理を行います。

<試薬>

  • 水酸化ナトリウム(20 g/L)
  • りん酸
  • フェノールフタレイン(5 g/L)
  • 二酸化けい素
  • 硫酸(1+35)
  • 過塩素酸

<器具・装置>

  • 水蒸気蒸留装置
  • 有栓メスシリンダー(250 mL)

前処理

<蒸留>

  • (1)試料250 mL(ふっ化物イオンとして30 µg以上を含む)をメスシリンダーに取り、フェノールフタレイン(5 g/L)2~3滴加え、水酸化ナトリウム溶液(20 g/L)を滴下して微アルカリ性にした後、蒸留フラスコに入れ加熱して約40 mLまで濃縮します。(受器の液はアルカリ性を呈するようにします。)
  • (2)蒸留フラスコを冷ましてから注入ロートから二酸化けい素1 g、りん酸1 mL、過塩素酸40 mLおよび沸騰石2~3個加えます。受器(有栓メスシリンダー250 mL)に水酸化ナトリウム(20 g/L)を20 mL、フェノールフタレイン(5 g/L)2~3滴を加え、逆流止めの先端は水面下に保つようにします。受器中の溶液は蒸留が終わるまで赤色を保つようにします。(赤色が消えた場合には水酸化ナトリウム(20 g/L)とフェノールフタレイン(5 g/L)を適度に滴下します。)
  • (3)コック1は閉めて、コック2は開けた状態で水蒸気発生フラスコと蒸留フラスコを加熱します。蒸留フラスコ内の液温が140 ℃に達してから、コック1を開けて、コック2は閉じて水蒸気を蒸留フラスコに送ります。
  • (4)蒸留フラスコ内の液温を140 ℃±5 ℃、留出速度を3~5 mL/minに調節し、受器の液量が220 mLになるまで蒸留を続けます。
  • (5)冷却器及び逆流止めを取り外し、冷却器内管及び逆流止めの内外を少量の水で洗い、洗液も受器に加えます。留出液に硫酸(1+35)を赤色が消えるまで滴下し、さらに水を250 mLの標線まで加えます。
  • (6)空試験として、水30 mLを蒸留フラスコにとり、(2)~(5)の操作を行います。

イオン電極測定法

イオン電極はイオン選択性があり、特定イオンに応答する感応膜の種類によって、ガラス膜電極、固体膜電極、液体膜電極および隔膜電極があります。

ふっ化物イオンの測定には固体膜電極を使用します。固体膜電極の感応膜は、難溶性金属塩の単結晶もしくは難溶性金属塩を主成分とする粉末を加圧成形したものです。イオン電極測定法では、固体膜電極が液中のふっ化物イオンと接する際にふっ化物イオンの活量に応じて生じる膜電位と比較電極との電位差を測定します。ふっ化物イオン濃度は事前に作成した検量線から読み取ります。

<手順>

  • (1)検量線を作成します。(検量線は既知濃度の溶液4~5個を調製し、これらの液に対する膜電位差を測定して作成します。)

  • (2)前処理で得られた留出液100 mLを100 mLビーカーに移します。
  • (3) 緩衝液(pH5.2)10 mLと撹拌子を加え、電極を液に浸けて5分間撹拌します。(緩衝液:塩化ナトリウム58gとクエン酸水素二アンモニウム1gを水500 mLに加えて溶かし、酢酸50 mLを加えます。水酸化ナトリウム溶液200 g/LでpH5.2に調整し、水を加えて1 Lにします。)
  • (4)5分間撹拌後の値を読みます。

イオン電極測定法

ランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度分析法

前処理後の留出液にランタン(Ⅲ)とアリザリンコンプレキソンとの錯体を加え、ふっ化物イオンとの反応によって生じる青い色の複合錯体の吸光度を波長620 nmで測定して、ふっ化物イオンを定量し、ふっ素化合物の濃度を定量求める方法です。以下に必要な試薬と操作手順を示します。

<試薬>

  • ランタン-アリザリンコンプレキソン溶液(市販のアルフッソン®を溶解して調整)
  • アセトン

<操作>

  • (1)蒸留操作で得られた留出液の適量(30 mL以下、ふっ化物イオンとして4~50 µgを含む)を全量フラスコ50 mLに取ります。
  • (2)ランタン-アリザリンコンプレキソン溶液を5 mLとアセトン10 mLを加えた後、さらに蒸留水を標線まで加え振り混ぜ、約1時間静置します。(ランタン-アリザリンコンプレキソン溶液はふっ化物イオンと反応して青い色の錯体を生じます。また、残留塩素などの酸化性物質があるとランタン-アリザリンコンプレキソン溶液の色が脱色されてしまい正確な値を得られません。)
  • (3)空試験として蒸留水についても蒸留前処理操作を行い、得られた留出液30 mLを取り、操作(2)を行います。
  • (4)試料について(2)で得た一部の溶液をセルに移し、(3)を対象液として波長620 nm付近の吸光度を測定します。
  • (5)検量線からふっ化物イオンの量を求め、試料中のふっ化物イオンの濃度を算出します。

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ふっ化物イオンの検量線は前もって作成しておくんだよ。

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【参考文献】

  • 1)日本産業規格K0102-2
  • 2)日本規格協会:詳解 工場排水試験方法 JIS K 0102 解説
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