はじめに
当社では創業以来、多くの工業用ろ過機を開発し、製造・販売してきました。
主な納入先は精密機械工業、自動車工業、鉄鋼業などの表面処理工程、化学工業など多方面にわたります。ここではその中で当社が推奨しているろ過方法の一つである「プリコートろ過」について記載します。
プリコートろ過とは
ろ過助剤を液体に懸濁させた液をろ過し、ろ材表面にろ過助剤からなるケーク層(プリコート層)を形成させます。このプリコート層をろ材としてろ過を行う手法をプリコートろ過といいます。
図1 プリコート層の断面
プリコートろ過ではプリコート層表面でろ過対象液中の粒子のケーク層が形成されます。また、プリコート層内に一部の粒子が入り込んで捕捉されるという深層ろ過現象も起こります。
図2 プリコートろ過時の断面
プリコート層を形成するろ過助剤
プリコート層を形成するろ過助剤は
- ①かさ密度が小さい
(ろ材からプリコート層がはがれないようにするため) - ②沈降しにくい
(ろ過助剤を分散させた液をろ材でろ過するため、沈降しやすいろ過助剤を使用するとろ過することが難しく、プリコート層を形成できないため) - ③非圧縮性でケークの抵抗が小さい
(プリコート層が圧縮される場合、プリコート層自体がろ過の抵抗となるため)
ことなどが必要です。代表的なろ過助剤としては、珪藻土が挙げられます。珪藻土以外には、パーライトやセルロースなどが用いられています。
プリコートろ過のメリット・デメリット
プリコートろ過のメリットは
- ①膜ろ過やカートリッジろ過よりも安価な精密ろ過手法である
- ②ろ過開始直後からろ過精度が高く清澄なろ液が得られる
- ③懸濁物質がろ材に直接触れにくくなるため、ろ材が長持ちする
などがあります。
プリコートろ過のデメリットは
- ①ろ過開始前にプリコート工程の時間が必要
- ②ろ過助剤使用のランニングコストがかかる
などがあります。
プリコートろ過は膜ろ過と比較して、ろ過対象液の性状の変化にも柔軟に対応することができるよ
おわりに
プリコートろ過は、精密ろ過の中では安価なろ過方法であるため、食品や化学工業などさまざまな分野で使用されています。
マイクロバブルを用いたプリコート技術などろ過技術の発展のため、当社の技術研究所で研究がおこなわれているよ
【参考文献】
- 1)入谷 英司;絵とき 濾過技術基礎のきそ、日刊工業新聞社(2011)
- 2)柳下 馨;プリコートろ過技術とマイクロバブル技術を融合した新技術と装置開発,化学装置,vol.65,No.8,56-60(2023)
ろ過助剤にもいろいろな種類があるから、求めるろ過精度に応じて選定しているよ