BODとは?
BODはBiochemical Oxygen Demandの略で、日本語では「生物化学的酸素要求量」となります。溶存酸素の存在下で、水中の有機物質などが生物化学的に酸化・分解される際に消費される酸素量を示しており、海域および湖沼以外の公共用水域などの水域における有機物による汚染度を表す際に使われます。BODが高い値を示す場合は溶存酸素が欠乏しやすいことを意味し、河川の自浄作用や魚類をはじめとする水生生物の生態に影響を及ぼします。
BODの測定概要
BODは、水中の好気性微生物によって消費される溶存酸素の量をいいます。試料を希釈水で適当な倍数で希釈し、希釈した試料をふらん瓶に分注します。この容器を20℃で5日間培養し、培養前の溶存酸素量と5日間培養後の溶存酸素量を測定し、その差から酸素消費量を求めてBOD値を算出します。
BODの植種液には、植種用菌製剤、河川水、下水、排水処理水などが使われます。用いる植種液の違いによって測定値に誤差が生じる場合があります。
BODの測定手順
当社が行っているBOD測定の手順を簡単に説明します。以下の手順は、日本産業規格(JIS規格)の一つである工業用水・工場排水試験方法第1部(JIS K 0102-1)に基づいています。当社は溶存酸素の測定を電極法で行っています。
使用する薬品は次の通りです。
- 超純水
- 塩酸(1 mol/L)
- 水酸化ナトリウム溶液(1 mol/L)
- A液:緩衝液(pH7.2)
- B液:硫酸マグネシウム溶液(22.5 g/L)
- C液:塩化カルシウム溶液(27.5 g/L)
- D液:塩化鉄(III)溶液(0.25 g/L)
- 亜硫酸ナトリウム溶液(12.5 mmol/L)
- よう化カリウム
- アジ化ナトリウム
- 塩酸(6 mol/L)
- てんぷん溶液
- 希釈水(水温を20℃近くに調節し、曝気して溶存酸素を飽和させた水1 Lに対し、A液、B液、C液およびD液をそれぞれ1 mLずつ加えます。この溶液のpHは7.2となります。)
- 植種液(当社では、微生物による接触酸化塔出口の液を用いています。)
- 植種希釈水(植種希釈水のBODが0.6~1 mg/Lになるような量に、植種液を希釈水で調製したもの)
つづいて、必要な器具および装置です。
- ふらん瓶(100 mL)
- 培養容器(光を遮断できるもの)
- ふらん器(温度を20±1℃に調節できるもの)
- 溶存酸素計(DOメーター)
BODの測定は、試料採取後、すぐに行うよ。すぐに行えない場合は、0~10℃の暗所に保存し、できるだけ早く試験を行おう。
BOD測定の手順を以下にまとめます。
1.酸およびアルカリ、残留塩素などの酸化性物質が含まれている場合には、前処理を行います。
⑴アルカリまたは酸を含む試料
塩酸(1 mol/L)または水酸化ナトリウム溶液(1 mol/L)を加えて試料のpHを約7にします。
⑵残留塩素などの酸化性物質を含む試料
あらかじめ試料100 mLに アジ化ナトリウム0.1 gとよう化カリウム1 gを加えて振り混ぜた後、塩酸(6 mol/L)を加えてpHを約1とし、暗所に数分間放置します。でんぷん溶液を指示薬として、遊離したよう素を亜硫酸ナトリウム溶液(12.5 mmol/L)で、よう素でんぷんの青い色が消えるまで滴定します。
別に、同量の試料をとり、先の滴定値から求めた計算量の亜硫酸ナトリウム溶液(12.5 mmol/L)を加えて残留塩素を還元した後、必要ならば水酸化ナトリウム溶液(1 mol/L)または塩酸(1 mol/L)を用いてpH約7にします。
2.前処理をした試料および植種液を15分以上曝気して、溶存酸素を飽和させます。
3.希釈試料の調製を行います。
2.の試料の適量を植種希釈水で希釈します。試料の量を変えて同じ操作を行い、段階的に希釈倍数の異なる希釈試料を調製します。
4.植種液および調製したそれぞれの希釈試料について、ふらん瓶数本を用意し、希釈試料を移し入れます。
※このとき、気泡が入らないように注意します。
5.ふらん瓶に溶存酸素電極を差し込み、撹拌をした状態で、培養前の溶存酸素の量を測定します。
※溶存酸素電極をふらん瓶に差し込むとき、試料に気泡が入らないように注意します。
6.測定後は、希釈試料を十分にあふれさせた後、密栓し、20±1℃に調節した恒温器に入れて5日間培養します。
※藻類による二酸化炭素同化作用を防ぐために、ふらん瓶を遮光します。
7.恒温器の中に5日間培養した希釈試料の溶存酸素の量を5.と同じ方法で測定します。
BOD 値は、培養前後の溶存酸素の量から、次の式によって算出します。
BOD: | 生物化学的酸素消費量[mg/L] |
---|---|
D1: | 希釈試料の溶存酸素の濃度[mg/L] |
D2: | 培養後の希釈試料の溶存酸素の濃度[mg/L] |
P: | 希釈試料中の試料の占める分率(試料/希釈試料) |
B1: | 植種液のBODを測定する場合の希釈した植種液の培養前の溶存酸素の濃度[mg/L] |
B2: | 植種液のBODを測定する場合の希釈した植種液の培養後の溶存酸素の濃度[mg/L] |
f: | x/y |
x: | 試料のBODを測定する場合の希釈試料中の植種液[%] |
y: | 植種液のBODを測定する場合の希釈した植種液中の植種液[%] |
※希釈試料の溶存酸素の消費量(D1−D2)は、3.6~6.4 mg/Lの範囲内にある値を採用します。
※の範囲内にある値を採用します。
三進製作所では、計量証明事業も行っているよ。
BODの分析は、三進製作所へご依頼くださいね。
【引用文献】
- 日本産業規格K0102-1
- 日本規格協会:詳解 工場排水試験方法 JIS K 0102 解説
通常BODは、20℃の暗所で5日間培養したときの酸素消費量(BOD5)で表すよ。これは、テムズ川の汚染で悩まされていたイギリスで提案された水質指標で、イギリスのテムズ川の水が上流から河口である北海に流れ着くまでの流達日数が5日間であったことから来ているよ。