はじめに
イオン交換樹脂は工業製品の製造過程で純水製造や触媒として、広く利用されています。イオン交換樹脂はものづくりにおける純水製造装置・リサイクル装置に欠かせないものとなっています。ここではイオン交換樹脂の基本と純水製造方法および純水製造装置について記載します。
イオン交換現象
イオン交換現象とは、固相中のイオンと液相中のイオンを交換することで、液相中のイオンを固相に捕捉し、固相中のイオンを液相に放出する現象です。直接イオンを捕捉する部分はイオン交換基と呼ばれ、イオン交換基をRで表すと、一般的にAとBのイオン交換反応は式(1)で表せます 1,2)。
RA(固相)+ B(液相)⇄ RB(固相)+ A(液相) (1)
このようなイオン交換現象を示すイオン交換基を有する物質をイオン交換樹脂と呼び、1935年にAdams, Holmesらが多価フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合物がアルカリを吸着し、また、アニリンやm-フェニレンジアミンとホルムアルデヒドとの縮合物が硫酸を吸着することを発見したことから、イオン交換樹脂の合成研究の発端となりました3)。以後、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体を高分子母体とし、そこに化学反応によりイオン交換官能基を導入することで図1のようなイオン交換樹脂が開発されました。
図1 イオン交換樹脂
イオン交換樹脂の分類
イオン交換樹脂は、その働きによって陽イオンを交換する陽イオン交換樹脂と陰イオンを交換する陰イオン交換樹脂に大別されます。図2に陽イオン交換と陰イオン交換のイオン交換イメージ図をそれぞれ示します。また、陽イオン樹脂は強酸性陽イオン交換樹脂と弱酸性陽イオン交換樹脂に分けられます。陰イオン交換樹脂は強塩基性陰イオン交換樹脂と弱塩基性陰イオン交換樹脂に分けられます。表1にイオン交換樹脂の分類を示します。
(a)陽イオン交換樹脂
(b)陰イオン交換樹脂
図2 イオン交換樹脂のイメージ図
表1 イオン交換樹脂の分類4)
分類 | イオン交換基 | 使用pH範囲 | |
---|---|---|---|
陽イオン交換樹脂 | 強酸性陽イオン交換樹脂 | スルホン基(-SO3H) | pH 0~14 |
弱酸性陽イオン交換樹脂 | カルボキシル基(-COOH) ホスホン基(-PO3H2) |
pH 7~14 | |
陰イオン交換樹脂 | 強塩基性陰イオン交換樹脂 | 4級アンモニウム基(-NH4+) | pH 0~14 |
弱塩基性陰イオン交換樹脂 | 1~3級アミン基 | pH 0~7 |
イオン交換樹脂は陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂に分けられるんだね!
純水製造方法
純水製造の方法としては蒸留や逆浸透膜を用いた方法がありますが、ここではイオン交換樹脂を用いた方法について記載します。イオン交換樹脂を用いた純水製造方法としてはろ過→活性炭吸着→イオン交換というフローが一般的です。はじめにろ過により溶液中の懸濁物質を除去後、活性炭により残留塩素や有機物の除去を行います。その後、イオン交換樹脂により、溶液中のイオンを除去することで純水が製造されます。
純水製造に用いられるイオン交換樹脂塔は陽イオン交換樹脂塔と陰イオン交換樹脂塔を直列に接続した単床塔が一般的です。また、より純度の高い水を求める場合には陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合した混床塔を使用します。
図3に純水製造時のイオン交換イメージ図を示します。純水製造時のイオン交換反応としては、陽イオン交換樹脂では樹脂中の水素イオン(H+)が液中の陽イオン(Na+, Ca2+, Mg2+等)と交換されます。一方、陰イオン交換樹脂では樹脂中の水酸化物イオン(OH-)が陰イオン(Cl-, NO3-等)と交換されます。イオン交換された水素イオン(H+)および水酸化物イオン(OH-)により水(H2O)が生成されると共に不純物は除去されます。
図3 純水製造時のイオン交換イメージ図
陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を組み合わせることで、キレイな水(純水)ができるんだ
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パトローネi®は当社の運搬可能・引取再生可能なボンベ式イオン交換機です。引取再生方式であるため、イオン交換機のための再生装置や排水処理設備は不要です。再生とは不純物等を吸着し、飽和したイオン交換樹脂に薬品を通液することにより、再び通液可能な状態に戻すことです。
図4にパトローネi®の組み合わせ例を示します。純水製造ではろ過機→活性炭塔→陽イオン交換樹脂塔(カチオン塔)→陰イオン交換樹脂塔(アニオン塔)→混床塔(陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合したもの)の組み合わせが一般的です。
図4 イオン交換機の組み合わせ例5)
組み合わせ例2ではアニオン塔を2塔使用しておりますが、前段に弱塩基性陰イオン交換樹脂、後段に強塩基性陰イオン交換樹脂を使用しています。前段の弱塩基性陰イオン交換樹脂では鉱酸を吸着することが可能です。この鉱酸の中には強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着すると、再生がし難い物質もあります。したがって、鉱酸を多く含む液を通液する場合には強塩基性陰イオン交換樹脂の寿命を短くしてしまうため、前段に弱塩基性陰イオン交換樹脂を配置することが効果的です。
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【参考文献】
- 1)妹尾学, 鈴木喬, 安部光雄;イオン交換, 講談社, p.1(1991)
- 2)黒田六郎, 澁川雅美;イオン交換 理論と応用への手引き, pp.1-3(1981)
- 3)清水博;有機合成化学, 第30巻, 第11号, 973(1972)
- 4)垣花秀武, 大滝仁志;化学工学, 第24巻, 第6号, 470-471(1960)
- 5)https://www.sanshin-mfg.co.jp/product/recycle/patrone_i.html
イオン交換樹脂を使うことで液体中のイオンを捕捉・交換することができるんだ