はじめに
当社が約70年前に開発したろ過機は、竪型葉状ろ材を使用した精密ろ過機の先駆けであり、従来の葉状ろ材のろ過機と一線を画すオリジナル製品です。
同じ容量で最大限のろ過面積を確保できるこの竪型葉状ろ材(当社内名称:方線ろ材または、E号ろ材)(図1)はこのろ過器のため開発されました。この竪型葉状ろ材を使用した4K型ろ過機が昭和29年末に登場し、L30型ろ過機(図2)、L40型ろ過機が翌年に完成し、高速大量ろ過が可能になりました。F30~55型(図2)はめっき業界、より大きなろ過面積を有しているL50~150型は化学工業業界で主に使用されています。
竪型葉状ろ材精密ろ過機は、ろ過精度が安定しており、様々な分野で活躍しており、既に10数万台の納入実績があります。プリコート回路、洗浄装置を内蔵しており、多機能化と優れた操作性を兼ね備えた精密ろ過機です。また、小型から大型まで多機種にわたって標準化・量産化がなされており、経済的な精密ろ過機でもあります。
図1 方線葉状ろ材
導入事例
- 化 学
- 紡糸浴、精錬浴、薬品等
- 鉱 業
- ニッケル、銅、亜鉛等の精錬電解液等
- 無機工業薬品
- 硫酸、塩酸、苛性ソーダ、硝酸等
- 有機工業薬品
- メタノール
- 金属表面処理
- 処理液の循環ろ過
- 鉄 鋼
- めっき液、工業用水、圧延油、洗浄液等
- 機 械
- 切削油、研削油等
- 食 品
- 醸造、シロップ等
特長
竪型葉状ろ材ろ過機は、ろ材もろ布もそれぞれ一体構造になっており、シール箇所が上下二箇所だけなので、シール部よりのもれが少なく、下部中央集液と上昇流路によってプリコート層が均一に形成できるため、安定したろ過精度が得られます。ろ過塔本体の設置面積が小さいわりに大きなろ過面積を確保できるため、ろ過量も多く取れます。
また、一体型のろ材であるため、脱着作業は一度にできて、保守管理が楽にできます。他のろ過機よりも洗浄液の量が少なく、シャワーとエアーバブリングによる洗浄で、短時間で確実にろ材を再生できます。
竪型葉状ろ材ろ過機は、使用環境に最適な材料を選定しており、どのような液体のろ過にも対応できます。
仕様
竪型葉状精密ろ過機は、液種とろ過量に応じて、主要材質やろ過能力を選択することができます。特に、N4K、F30、F40、F55型ろ過機は代表的な製品として、数多くの実績を築いて、各分野のお客様に信頼され、愛用されています。
図2 竪型葉状ろ材ろ過機の代表例
主要材質一覧表
主要部品 | 仕様記号 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
A | L | LT | S | V | ||
本体 | 鋳鉄および鉄 | 硬質ゴムライニング | 硬質ゴムライニング | ステンレス | 樹脂ライニング | |
ろ材 | ろ板 | 鉄またはPP | PP | PPOまたはPP | ステンレス | PVCまたはPP |
中心パイプ | 鉄 | ステンレス | HTPVC | ステンレス | ステンレス | |
ろ布 | PPまたはナイロン | PP | PP | PP | PPまたはテフロン | |
ポンプ | ケーシング | 鋳鉄 | ステンレスまたは硬質ゴムライ二ング | 硬質ゴムライ二ング | ステンレス | CFR ETFE |
インペラ | 鋳鉄またはPPO樹脂 | ステンレスまたは硬質ゴムライニング | ステンレスまたはPPO樹脂 | ステンレス | CFR ETFE | |
シャフト | 鉄 | ステンレス | チタン | ステンレス | アルミナセラミックス | |
主な使用液 | 青化銅等 | ニッケル等 | 塩化ニッケル等 | アルマイト封孔 無電解ニッケル |
クロム酸含有液 次亜塩素酸ナトリウム |
精密ろ過の方法
竪型葉状ろ過機は、ろ過を行う前にプリコートおよびボディフィードを行う精密ろ過機です。 プリコートは、ろ過助剤と原液を混合してろ材の表面に均一なろ床を形成する方法であり、ろ過初期から清澄なろ液が得られるほか、ろ布の目詰まりを防止し、ろ材の洗浄・回復を容易にすることができます。ろ過性能を発揮するため、プリコート層の厚みは約2mmとなるように、ろ過助剤を適量に投入します。 ボディフィードは、ろ過原液中にろ過助剤を混入させ、原液中に含まれる固形分粒子とともにろ布上でケークを形成する方法であり、圧縮性粒子を含む液など液のろ過性が悪い時に行います。一般的には、プリコート法と併用する場合が多いです。
竪型葉状ろ材シリーズの機種一覧
型式 | ろ過面積[m2] | ろ過流量[m3/h] | ポンプの所要動力[kW] | 出入口口径[mm] | 重量[kg] |
---|---|---|---|---|---|
F30 | 2.5 | 5 | 0.75 | 40 | 160 |
F40 | 5 | 10 | 1.5 | 40 | 220 |
F55 | 12 | 25 | 3.7 | 50 | 550 |
L50 | 10 | 20 | 3.7 | 50 | 450 |
L60 | 15 | 30 | 5.5 | 80 | 800 |
L80 | 20 | 40 | 7.5 | 100 | 1500 |
L100 | 30 | 60 | 11 | 125 | 2000 |
L130 | 40 | 80 | 11 | 150 | 2500 |
L150 | 50 | 100 | 15 | 150 | 3000 |
【参考文献】
- 社内カタログ『SYL型 精密ろ過機_C1-50_2008-05(修2021-12)』
開発秘話:㈱三進製作所の創業者、柳下芳輝(最高顧問)は、常に仕事に没頭し、三進の中でも屈指の発明家でした。ある日、電車の中で、ろ過面積を増やし、強度がある自立できるろ材を作る方法について考えていました。その時、目の前の網棚が目に入りました。『そうだ、これだ。』この『網棚』から『方線ろ材』が生まれました。